そこはかとなく
そこはかとなく(なんとなく)
この言葉は時々会話でも使います。
「ん!なんだ!そこはかとなく、この臭いオナラか?」みたいにだけどこの言葉だけを抜き出して読むと、そこはかとなく緩い感じがして好きです。美しい大和言葉だと思います。
東京オリンピックが終わった夜に、加奈子は泣いていた。
時差のない国内の大会なので毎日朝からずっとテレビの前に座っていた。
「亜美も頑張ったよね、あたし応援してたんだよ、でも負けちゃった」
加奈子の隣で僕も涙を流したが、欠伸の後のそれである。
「圭一もありがとうね、一緒に応援したけど」
加奈子は泣きながら圭一に、今までずっと応援してくれたことを感謝してした。
明日からしばらく憂鬱な日が続くと思うと気が重い。
圭一は気分を変えるために加奈子にこう提案した。
「これからご飯食べに行こうか、台所に立つ気分じゃないし」
加奈子は頷き、服を着替え二人はアパート近くのファミレスへと向かったのだ。
ファミレスでは亜美の話になり
「亜美ちゃんもあんなに練習したのに、あたしもお友達もみんな応援していたんだよ」
ファミレスの客達は終わったばかりの東京オリンピックの話で盛り上がっていた。
「俺なんか昭和39年の東京オリンピックもテレビで観てたし、男子体操の加藤澤男とか知ってるし」
「父さん、またその話かよ三宅兄弟の話もするのかよ」
初老の男が息子や孫を相手に熱弁で語って大いに盛り上がってた。
上の空でそんな会話を聞いているた加奈子が東京オリンピック終わっちゃったんだね。
と手で顔を塞いで泣き出した。もしかして今気づいたのか。
「それにしても亜美ちゃん頑張ったのに残念だったね」
加奈子はまたそのことを口にして泣いていた。
いまその話はしない方がいいと思うんだけどなあ。と圭一は思った。
「でもさ、従姉妹の亜美ちゃんが中学テニス大会県予選の試合に負けたんだっけ」
圭一はそこはかとなく話題がずれているような気がした。
書き終わって思ったんだけど、コレじゃ掌編小説じゃなくて”笑い話”だよなって
落語の枕の様でもある。とにかく短い。20分くらいで書いた。
昭和の頃に流行ったナゾナゾの「太郎君は虫歯が痛むので学校を休んで目医者へ行きましたなぜでしょうか。答えは目も悪かったから」みたいな子供だまし的なところが何となく好きです。そこはかとなく。もっと真面目に書かねば!
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