掌編小説シリーズが始まりました。 あばたもえくぼ

三笠書房 知的生き方文庫 ”美しい「大和言葉」の言いまわし”


この本を参考にして、本から言葉を拾った言葉から連想する物語を書いてみました。
書いたのは数年前だけど、パソコンの中に眠っていた駄作をネットに上げて新鮮な空気を吸わせてあげたいと思います。このような文章は沢山あるので随時アップしていきたいと思います。過去の文章を読み直すと半分くらいは書き直している状況です。


 あばたもえくぼ(恋は盲目)

私たちっていつまでこんななのかなぁ。

 彼氏のいない歴と年齢が同じって恥ずかしすぎるでしょ。ミソノの口が始まった。
「ユキちゃんは男の子に人気があるからいつでも彼氏は出来ると思うわ。
 でも私なんか顔が可愛いだけでなんの取り柄もないし。少しばかり
 肌が白くてウエストがくびれていることがどうだって言うのよっ!彼氏が欲しい」
「あんたねぇ、そんなことばかり言ってるから彼氏が出来ないんでしょ」

これが私と高校の時からの友人のミソノとの会話。いつもこんなじゃ無いけど
ミソノはなんか切れていたみたいだ。

 大学に入ったばかりの頃
「あたしたち、もう高校生じゃないし真剣に男の子とお付き合いしても親から怒られることも無いわよね」と少々気持ちが荒れていたこともあった。
あれから1年後?本当はもう少し早かったかもしれないけど、
ミソノに彼氏と呼べる人が出来たみたい。

 ミソノに彼氏が出来たんじゃないかなって頃を思い出してみると、そういえばミソノって少し優しくなってきたかも。表情も穏やかになったような気がする。

 ミソノに彼氏ができて一ヶ月が過ぎた頃に
「ねえねえ、ユキちゃんってまだだよね」
「なにがぁ」
「いやだぁ彼氏だよ、もう出来たのかなって」
「そんなこと聞いてどうすんの」
なんだかミソノの会話につきあうのが疲れてきちゃう。
「ユキちゃんには教えてあげる。私の彼ってねぇ・・・・・・」と
自分から言いたくてしょうがないみたい。
でも私は気がつかないふりをしていた。だって悔しいじゃん。

あのねぇ私はね彼氏が出来ないんじゃなくて作らないの、将来の目標があるからね、
つまらない男につきまとわれて自分の夢を台無しにしたくないの。

 ミソノは私が高校生時代に家族から恋愛に対して監視されていたと思っているみたい。

「親が怖いの」
「どこの親も一緒だよ娘を心配するのはしょうが無いじゃん」
彼氏を作るのも出来た彼氏とエッチするのもしないのも、私が決めることだよ
親なんて関係ないことだよ。

「結婚の早い人って高校を卒業してすぐに結婚しちゃうでしょ、
そんなのもったいないって。結婚が目標なら仕方ないけど、じゃあ結婚したらその後はどうすんのよ」そう言いたくなった。

自分に彼氏ができると、それが周りと比べて遅いとしても彼氏が出来たとたんに
身近な友人に、そのことを言いたくなるのね。自分の彼氏がどんなに素敵な人か
自慢をしてしまうものなのね。

 私が彼氏のことをなにも聞かないことにしびれを切らして、ミソノは自分から彼氏のことを語るようになった。背が高くてねとか物静かなの、伏し目がちなところが素敵よとか、いつも私に優しいのとか。もういい加減にしてって感じ。

 話を聞くとミソノの彼氏は駅近くのファストフード店で仕事をしていると言っていた。
私はミソノに内緒でそのお店に行ってきたけど、日曜日のお昼時に行ったけど、お店は空いていて活気が無いお店だ。カウンターに立っている店員さんは不慣れな感じでオドオドしてたし声が小さくてなにを言っているのか解らないし。バイトの女の子に指示されて、っていうか指示を出す方の人じゃ無いの?ゆっくりとした動作がファストフード店にはむいていないのがすぐにわかってしまった。
 他に男の店員さんはいないからもしかしてこの人がミソノの彼氏?なのかなあ。まさかとは思ったけど、そうかもしれない。なんだか背筋が寒くなってきた。


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