嫉妬(公募ガイド、小説でもどうぞ)(投稿用)

  嫉妬

                                            

 言いがかりにもほどがある。イヤそれ以上だ。
 俺はある女から誹謗中傷を受けていた。
それでも俺は気に入った女と楽しい毎日を過ごしていたのだが、
俺に言いがかりを言う女には、うんざりを通り越しムカついてきた。
 今こそ反論をしてやろうと思うんだ。あの女のせいで俺の評判は地に落ちた。
世間からは笑いながら、調子に乗ってるなよ、と後ろ指をさされているのだ。
付き合っている彼女からは嫉妬こそあれ、俺に不満を言うやつなんか一人もいないんだ。
それどころか「次に会ったときにはもっと楽しいことしましょうね」
と向こうから俺に会いたがる彼女の方が多かった。
だけどあの女の言い草はこうだ 
「あなたって女たらしですわね、世間的には不倫だし、貴方のご友人とも張り合う
ようにして女を次から次へと替えて、でもそれならまだましだわ。
同時期に何人も股に掛けて、恥ずかしいことですわ、言い訳は出来ないわよね。女癖が
悪いとも言いふらしますからね」
このように最近では俺に対し面と向かって言ってくる始末だ。
 俺の返事は決まって,
「女癖が悪いって言うけど、そうじゃない。好きになった女性に優しくしたり、
気持ちが乗ればそれなりの事をしたくなるのは当たり前だろ、たまたま付き合って
いるときが重なっているだけだ」
 こうやって反論しても女は
「言い訳はよしてよ、あなたのせいで泣いている女は数知れないのではないですか」
「それは嫉妬によるものだ、俺が原因じゃ無い。女同士で解決して欲しい」
その女はトゲのある言い方で俺を責めた。
確かにその女の言い分はわかる。
 俺はお金持ちの家に生まれた。俺自身の金では無いが、人が羨む暮らしだ。
だからといって自由気ままに暮らしてはいない。
何しろ親の勝手で政略結婚をさせられたのだから。
結婚が出来る年齢に到達してすぐだから十代で所帯持ちというわけだ。
結婚したからと言って俺の青春は満ち足りてなどいない。もっと自由に恋愛もしたかった。
その反動があって今のように女癖が悪いだのと言われるようになったんだ。
それに俺と妻は結婚しても性生活が上手くいかなかった。
 俺よりも少しばかり歳上だった妻は子供っぽい俺を避けていた。
結婚してしまえば政略的に成功な訳だから相手は俺を放置した。
セックスの相性が悪いどころでは無くセックスそのものが出来ていないのだ。
妻は俺を避けるけど浮気というものには縁が無かったのは、俺から離婚を切り出されたら
全てを失ってしまうからだろう。つまり打算で繋がっていたのだ。
 逆に俺は自分の青春を取り戻すべく浮気をした。
俺の初体験は今の妻では無いのだ。童貞の筆おろしの相手は、親父の若い愛人の妹だった。
 初めての女は俺より年上だったけど人当たりが良く性格が穏やかな女性だった。
初体験の相手がその女で良かったのだが、年上の女性への憧れが強くなり、
俺の好きになる彼女は年増ばかりだったけど、俺のことを可愛いと言ってくれて悪い気は
しなかった。
 多いときは同時に三人の年上の女性と付き合っていた。
だけど裕福で所帯持ちで後腐れ無い俺に女達が擦り寄ってきたのだ。
中には俺から付き合ってくれと近づいていった人もいた。
後から本当の事を知ったが、俺に声を掛けて貰うように周りから外堀を埋めるかのように
向こうから近づいてきたらしい、美人だったから手間が省けて結果良しだった。
 あるとき身体を壊し仕事を休んでいて、
気分転換に自然の美しい郊外の公園に来たときだ。
まだ中学にも上がらない少女に目がとまった。
近くには婆さんがいて遊んでいる子を見守っていたようだが、
俺は近づいていって婆さんに、この子の両親に会わせた欲しいと声を掛けたもんだから、
婆さんは騒ぎだし周りにいた人達も加わって大騒ぎになったこともあった。
幸い警察沙汰にはならなかったけれど、あの時は自分の軽率さを反省した。
俺は可愛い子だから両親がいたら
「とても可愛くて素晴らしい娘さんだから大切に育てるように」
と言いたかっただけなのだが、まるで変質者扱いをされてしまった。
よく考えれば親切な人も変質者も口から出てくるのは同じ言葉なのだから俺も悪かったのだと思う。
それに大きなお世話だったかな。
 麻植の評判は世間に広く知られてしまった。
 俺は何も悪くない。言い訳を言わせてらいたい。
俺と関係を持った女は、向こうから離れていった女性のことは知らないが、
俺は一度でも抱いた女性ならば気に掛け、お金が無くなった言われれば援助したし,
住む家がないのなら俺の家に一緒に住まわせてあげた。俺のの家は金持ちで邸も大きかったからだ。
セックスして飽きたら女を捨てるなんてことは断じてないのだ。
これでも女癖が悪いと言われなければならないのか。
俺のことをあざ笑い、噂を広めている女に言った

「もう止めてくれ紫式部。そして君を抱いてあげられなくてごめん」

だが女は俺の言うことなど全く聞かず源氏物語が書いたのである。

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